前にも手をつないだことなんてあったのに、今日は妙に心臓の音が早いのはなぜですか。手のつなぎ方が、恋人つなぎっていうものだからですか。
 それとも、私がレオ様のことを大好きになったからですか。

 展望台のある丘に登りながら、手を引いてくれるレオ様が何度も私を振り返ります。私がちゃんとついて来れているか、足が痛くないか、何も言わないけど気にしてくれているのですね。

 目が合うたびに微笑むレオ様の顔を真正面から見られず、ずっと下を向いたまま進みます。

 この丘は王宮の裏手にあり、私たちが登ってきた道と反対側から降りると王宮の裏門です。レオ様のお部屋からなら、視界も邪魔されずに花火も見られたでしょうに。わざわざこの丘から見ようと言ってくれたのは、私と一緒に見たいと思ってくれたからでしょうか。

 ダメだわ。

 私なんだか恥ずかしくなってしまって、メイの指示がないと何も言えなくなってしまいました。頂上に着くとレオ様が、座る場所を探してくれます。その隙に私はメイからの指示書の最後の項目を確認しました。


▼メイからの指示その五
『何も言わずにレオ様の目を見て百秒数えること』
 うん、これならできそうよ。だって私、今心がいっぱいで何も言えないもの。百秒くらい黙ってられる。
 ……えっと、補足もあるのね。

『事前に隠れてあくびをしておくと尚可』
 あくび……? うん、でも分かった。レオ様が座る場所を探している間に、あくびしておくわ。


「……ふぁぁあーあ」
「えっ、もう眠い?」
「うわっ、レオ様すみません! 私ちょっと……その……」


 しまった、隠れてあくびをするはずだったのに、思い切り目撃されてしまいました。メモをしまわなきゃ……。


「そのメモ、何?」


 私ったら、メモをしまう時にレオ様に見つかってしまいました。このメモだけは絶対に絶対に見られたくありません! こんなものを見られたら、私恥ずかしすぎて泣いてしまうわ。


「ナンデモナイデスヨ」
「コレット。いつもの事だけど寸劇が下手過ぎる。いいから見せろ」
「イヤデス、イヤデス」
「いいから」


 レオ様は私の手からメモを奪い取ると、私の届かない高さまで持ち上げてメモを読みます。ああ、神様。極限の恥ずかしさが原因になって死亡するケースってあるのでしょうか。半泣きになりながら私もメモに手を伸ばしますが、レオ様に手首をつかまれてしまいました。