さあ、レオ様どうですか!
 レオ様に背中を向けて、うなじが見やすいように少し下を向きます。どうやら男の人は、うなじを見るとときめくらしいですよ。レオ様、私にときめいて下さい……って、今日は私が告白する日なのに。


「コレット……」
「はい」
「……背中が、かゆいのか? どのあたり?」
「……う……レオ様、違います!……もうちょっと右の方でお願いします……」


 メイの作戦、全然ダメじゃないですか。お友達から恋人同士にステップアップしたはずの私たちですが、元々は幼馴染。子供の頃から一緒に過ごしてきたんですもの。今更うなじを見て喜ぶとか、そんな訳ないじゃないですか。背中がかゆいフリしちゃいましたよ。


「もう大丈夫です。ありがとうございます……」


 背中をかいてくれたレオ様に御礼を言って、体を起こそうとしたその時。レオ様がそのまま私の首の後ろに短くキスしました。


「……ぎゃっ!!!」


 恥ずかしくて首を押さえてすぐに振り返ると、レオ様がお腹を抱えて笑っています。私の反応が面白いですか?

 にわかに信じがたいのですが、メイの作戦が少し上手く行きましたね? 何となくレオ様との距離が縮まった気がしてきました。首から頭にかけて何かが爆発したように熱いですが、このまま『メイからの指示その四』に参りましょう。


▼メイからの指示その四
『人混みでわざとはぐれるべし』
 これも簡単ですね。私、多分この指示がなくてもはぐれると思います。だって見てください! 休日だからか、もうすぐ夕方だというのにこの人だかり!

 お祭りか何かがあるのでしょうか。向こうの芝生広場には子供たちもたくさん走り回っていて楽しそうです。こうしてみると、本当にグランジュールは平和です。きっと、国王陛下の睨みが効いているからですね。

 ほら、そうこうしている間にやっぱりレオ様とはぐれました。声を出してお名前を呼んだら王太子殿下だとバレてしまいますから、目だけで探しましょう。しかし、レオ様とはぐれることにどういう効果があるのでしょうか。会えない時間が愛を育てるとか?


「……コレット! 見つけた!」
「あ……」


 一瞬で見つかりましたね。こんなにすぐに見つかってしまっては、育つものも育たないです。


「今日は花火があるらしい、展望台へ行こう!」


 レオ様が、私の手を取ります。手……つないでしまいました。
 メイ、もしかして指示その四の狙いってこれ? 指示その一で私が失敗することを分かっていたのかしら。

 今の私は手をつないだだけでタコのように真っ赤でしょうね。本当は上目遣いでレオ様を見上げるべきところかと思いますが、恥ずかしいので下を向いておきましょう。
 私たちはもうはぐれないように手をつないだまま、花火がよく見えるという展望台のある丘に登ります。