落ち着いた微笑みを浮かべた詠二お兄ちゃんは、ふと真剣な表情をすると、わたしの目を真っ直ぐに見つめた。




「苑香。1つ、お前に頼みがある」


「……はい、なんですか?」




大事なお話を聞く心構えをして、詠二お兄ちゃんを見つめ返す。




「――皇輝を、救ってやってくれ。……あいつは、“ありのままの心”ってやつを長いこと無視して、壊れかけちまってる」


「……!」


「あいつのそばには、苑香みたいなやつが必要だ。冷たく見えるかもしれねぇけど、皇輝は繊細で純粋で素直な、可愛いやつでさ」




詠二お兄ちゃんは眉を下げながら笑って、静かに「助けてやってくれ」と口にする。

わたしは、その強い想いがこもったお願いに対する答えを、自分の心に問い掛けた。




「――はい、喜んで」




ニッコリ笑って答えると、詠二お兄ちゃんはホッとしたように笑って、「ありがとな」と感謝を告げた。