辺りを見回せば、公園の隅に蹲っている女の子がいて、ジャリッ、と砂の地面に足を乗せる。




「どうしたの?」


「……ピアノ、教室に……行きたく、ないの……」




女の子の前にしゃがみこんで尋ねると、涙混じりの声が返ってくる。

よく見れば、音符デザインの手提げが女の子の横に置かれていて、中から楽譜の本がチラッと見えていた。




「そっか。どうして行きたくないのかな?」


「わたし……ピアノ、すきじゃない……ピアノなんて、習いたくない……」


「そうなんだね。ピアノを習うことになったのは、なんでなのかな?」


「お母さんが……ピアノ、ひけるように……ぐすっ、なりなさい、って……」




お話を聞いていくと、どうやらこの子のお母さんは音楽に情熱をかけている人のようだった。