“静かなところ”は、どうやら黒羽くんが案内してくれるらしい。
一緒に教室を出たわたし達は、3階の渡り廊下から離れ校舎に移って、西階段の踊り場で足を止めた。
人気が全く無くて、足音もよく響くくらいに静かな場所。
ここなら確かにうってつけだけど……。
黒羽くんって、実は学校のことよく知ってるのかな……?
「……話」
「あ、うん。黒羽くんが気にしてるのって、昨日の……飛翔謳歌、のことだよね? そこについては、もう、関わる気はないよ」
振り返った黒羽くんから促されて、教室では話しづらかったことに触れる。
お母さんのことを知れないのは、もちろん残念だけど……優しい黒羽くんが出した結論なら、きっと知らない方がいいんだと思う。
今は、その考えに自信が持てるから。



