Side:市松(いちまつ)苑香(そのか)


週が明け、白いセーラー服に袖を通したわたしは、バスに乗って学校に向かった。

高校の敷地内に植えられた桜はまだ綺麗に花を咲かせていて、けれど散った花びらも地面には多く落ちている。




「あ、苑香(そのか)さん。おはよう」




ロッカー式の下駄箱で靴を履き替え、4階の教室を目指して階段を上がると、名指しで声を掛けられて顔を上げた。

階段の少し先で振り返ってわたしを見下ろしていたのは、同じ中学校出身の逢見(おうみ)(つかさ)くん。




「おはよう、逢見くん。偶然だね」


「うん。月曜の朝から苑香さんに会えると、いいことがありそうな気がするよ」


「ふふっ、わたしはフクロウ?」