「ううん、大丈夫です。お母さんのことは、もう整理がついてますから。……皆さん、ありがとうございました」




ぺこりとお辞儀をすると、ストレートロングの髪をした女の人が立ち上がる。




「人通りがあるところまで送っていくよ。ここら辺はあんまり治安が良くないから」


「ありがとうございます」




申し出をありがたく受けて、わたしはお母さんの“思い出の倉庫”から帰ることになった。


詳しいお話を聞くことはできなかったけれど……この場所の空気を感じられたことは、よかったと思う。



帰り際、わたしが最後にもう一度カラフルなお部屋の中を見ると、“総長さん”と目が合った。


あの、神秘的な瞳――……その奥に、彼の“心”が垣間見えたような気がして、後ろ髪を引かれる思いで会釈をする。



倉庫からの帰路は、“総長さん”の瞳ばかりが浮かんで、どこか寂しいものだった。