「……それが何だ?」




矢吹先輩の言葉を皮切りに、若菜ちゃんも詠二お兄ちゃんもそう言って、わたしを庇い始めた。

わたしもお父さんと同じ疑問を持って戸惑っていると、矢吹先輩はわたしに視線を流す。




「彼女は、ご子息が停学処分を受けた“暴力沙汰”に巻き込まれて、あのような姿に……先程も、その時の話をしていたんです」


「……そうか、君が現場に居合わせた……」


「責任を、とは、優しい彼女は言わないでしょうが……話を聞くくらいのちょっとした時間は、取っても良いのでは?」




控えめに微笑んだ矢吹先輩の指摘を受け入れたように、お父さんはわたしをじっと見つめる。


今なら、話し相手として認識されている。

そう直感したわたしは、矢吹先輩達がくれたチャンスを逃さないように、なるべく感情が乗らない言葉を探した。