傷だらけの黒猫総長



詠二お兄ちゃんに頷いて答えたわたしは、皇輝くんに向き直って、ぎゅうっと震えている“子猫”を抱き締める。




「大丈夫、怖くないよ。わたしの為に怒ってくれたんだよね。人が傷つけられて、我を忘れるくらい怒れるのは、優しいことだと思うな」


「でも、苑香まで傷つけてたかもしれない……」


「ううん、皇輝くん、わたしのこと分かってたよ。他の人が近づこうとした時は反撃してたけど、わたしは何もされなかったもん」


「……、けど……」




怖がっている皇輝くんの背中を、トン、トンと叩いて、安心させるように言った。




「もしまた同じようなことがあったり、皇輝くんが関係ない誰かを傷つけそうになったりしたら、わたしが止めてあげる」


「……それじゃ、駄目だ……それじゃ……」




これだけ近くにいるわたしでも聞き取れるか怪しいくらい、小さな小さな声で「苑香の言う通りにできない」と皇輝くんが言う。