「みんな、特定の場所でしか、特定の相手にしか見せない一面があるよね。皇輝くんも、きっと同じだよ」
だって、心はひとつのものに対しても、色んな反応をする。
数え切れないほど多くのものがある日常なら、時には短い期間に正反対の思いを抱えることだってある。
でも、正反対だからと言って、どちらかが偽物の思いになるわけじゃない。
暴走族の総長さんで、喧嘩をするのも本当。
真面目に授業を受ける普通の高校生で、優しいのも本当。
「わたし達が付き合っているのは、クラスメイトの黒羽皇輝くん。皇輝くんが学校の外で喧嘩をしていても、それは」
言葉を区切って、わたしは顔を上げた。
「その時の皇輝くんと、相手の人の付き合い。わたし達には、関係ないことだよ」
「え……」
みんなは驚いた顔をする。



