「おぉ、飛龍火煉(ひりゅうかれん)の名前まで入ってらぁ。紛うことなき本物だな」




女の子がお母さんの服をバサッと広げると、奥の方に立っていた体格のいい男の人がそう言って豪快に笑う。

ソファーに座っている女の人と、もう1人、優しげな微笑みを浮かべた男の人も、お母さんの服を見て「へぇ」と興味深そうにしていた。



やっぱりお母さんは、ここの人達にとって特別な存在なんだな……。


なんだか嬉しいような、誇らしいような気分で、微笑みながらみんなの様子を見ていると、正面から視線を感じて顔を向けた。

わたしをじっと見つめていたのは、奥のソファーに座っているあの人。




「……飛翔謳歌のことを、母親から聞かなかったのか?」




彼はわたしから目を逸らさず、感情の窺えない表情でそう尋ねた。