傷だらけの黒猫総長





「おはよう、逢見(おうみ)くん。そんな顔をしなくても大丈夫だよ、注意しに来たわけじゃないから。それじゃあね、市松さん」


「はい、ありがとうございました。……あのっ、またお話を聞かせてください」


「……うん」




矢吹先輩は微笑んで答えると、階段に引き返して行った。

残されたわたし達は視線を交わして、お話を始める。




「昨日の話、聞いたよ。その顔は……」


「うん、その時にちょっとね……でも大丈夫だよ、昨日よりよくなってるから」




心配をかけないようにそう言うと、司くんはくしゃっと痛ましげに表情を歪めた。




「苑香さんが暴力を振るわれる謂れなんてないはずなのに……やっぱり、黒羽(くろば)と関係があるの?」


「ううん、皇輝くんはあの人達に捕まってたわたしを助けてくれただけ」