「勉強に励んでいると思って、今まで“遠坂(とおさか)先生”のお宅に預けていたが……私の認識が甘かったようだな」


「い、え……」


「遊んでいるのでなければ何をしている? 答えてみなさい」


「それ、は……」




右に左に、落ち着きなく泳ぐ視線は、黒羽(くろば)治雄(はるお)の次の言葉で、急速に生気を失った。




「高校生になっても、まだ分からないようだな。生まれつきの“欠陥”は、その後の努力で補うしかないと」


「――……はい。申し訳ありません」


「出来の悪いお前が、将来社会の役に立つ人間になれるよう、厳しく育ててきたと言うのに……」


「……」




無機質な瞳で黙り込む皇輝に、治雄は淡々と説教を続ける。

行き交う周囲の人々から取り残されたように、光の中にありながら影に包まれているように。