Side:―――


暗い空を忘れるように、人工の光で埋め尽くされた駅前の大通り。

帰宅か、出勤か、はたまた遊興か、それ以外か。


目的を異にする人々は、同じ道を行き来しながらも、それぞれの日常を交えることはない。




「ゲホッ……な、んだ、このガキ……っ!」


ドスッ


飛翔謳歌(ひしょうおうか)、14代目総長。……うちの縄張りで調子に乗るな」


「なっ……クソ、よりに、よって……」




ガクッと意識を失った男を見下ろして、黒羽(くろば)皇輝(こうき)は踵を返した。

影のような裏通りから、光に溢れた表通りへ。


ブブブ、とポケットで振動するスマートフォンに気づくと、皇輝は電話に応じて「もしもし」と声を出す。




〈もしもし、僕だけど。何かあった?〉