「あ、ご、ごめんね、司くん……でもあの、怖くて離せそうになくって……」


「う、うん。落ち着くまで、好きに使ってもらっていいけど……体はもう少し、離してもらえた方がいい、かな……」


「体……? あっ……ご、ごめんね!」


「いや、あの、僕の方こそごめん……!」




易しい指摘を受けて、体を“押し付け過ぎている”ことに気づき、赤面しながら少し離れる。

司くんも首まで真っ赤になって、手の甲で口元を覆いながら横を向いていた。


大分恥ずかしく、そして気まずい空気になっていると、ガチャッと扉が開く音がして。




「逢見くん、市松さん――……」


「「矢吹先輩!?」」




わたし達は振り返って、矢吹先輩と驚いた顔で見つめ合う。

先に落ち着きを取り戻して微笑んだのは、矢吹先輩だった。