距離を取り直すように、黒羽くんは腕を離しながら頷く。

わたしとしても、離れた方が落ち着くのに……隣に座り直すその姿が、ちょっと寂しかった。




「兄さんは、飛翔謳歌の10代目総長で……俺にも、“ここで総長になれ”って言って、飛翔謳歌に入れたんだ」


「10、代目? そっか、そんなに……それじゃあ、詠二お兄ちゃんも、黒羽くんも、お母さんの“跡を継いだ”ってことになるのかな?」


「あぁ。総長は……飛翔謳歌のリーダーで、歴代の看板を背負って立つ役目があるから」


「看板、か……」




なんだか重みを感じる言葉だ。

黒羽くんも、想像以上に重いものを背負っているのかな?




「……俺が、暴走族の総長だって分かっても……“友達”のままでいてくれるか?」




黒羽くんは、ふと不安そうな目をして、わたしを見つめた。