「知らない、方がいいと思う……でも、苑香の気持ちも、大事にしたくて……きっと、寂しいよな」


「……!」




わたしの目は丸くなった。

黒羽くんがそんなふうに考えていてくれたなんて……そしてそれを、打ち明けてくれたなんて。


どうしてか、胸の奥がキュウッと締め付けられる。




「ありがとう。……実はね、黒羽くんの言う通り、ちょっと寂しいんだ。おばあちゃんがいるから、ひとりぼっちじゃないんだけど……」




わたしも本音で返すと、黒羽くんは気遣うような視線を向けてくれた。

それにニコッと笑顔で答えて、視線を落としながら続きを話す。




「わたしね、お父さんも小学生の時に亡くなっちゃったから、心の整理のつけ方は、分かってるんだ」


「そう……なのか」