「ミルティアは・・・・ずっと俺の為に動いてたのかよ」
思わずミルティアの手紙をくしゃりと握りしめ、慌てて戻す。
何だよ、夢で見たって。
かつて冤罪で殺されたって。
俺が魔竜王になるって。
「っざけんな、馬鹿野郎」
俺が自分の為だけに生きてる間に、アイツはずっと俺の為に生きてたのかよ。
否定したいのに、現実に起こった事を考えたら否定できない。
もしミルティアが関わらなければ、この家族に出会わなければ・・・・。
「あの子ったら本当に一途なんだから。
でもそれはそれで幸せよね」
「どこがだよ！
俺は・・・ずっと何も知らずに・・・・挙げ句アイツに剣を向けたんだ！」
胸が苦しい。
ミルティアに何をしたんだ、俺は?!
「で、ボコられたんだろう？
やっぱり俺の娘は最恐だな」
「ふふふ、ミルティアってば頭は良いのに相変わらず脳筋よね」
親達は明るく軽すぎるだろう！
しかもおじさんは何で毎回ドヤ顔なんだよ！
「まあミルティアが惚れた男可愛さに勝手にやったんだからいんじゃないか？」
「言えてる。
本人はけっこうノリノリで楽しんでたに金貨１枚！
「それ、賭けにならないだろう」
「言えてるな」
「「あははははは」」
兄達含めて明るすぎるぞ、この家族は!!
「泣いたんだ」
「「「ん？」」」
俺の一言に男達がピタリと動きを止めた。
「ミルティアが俺を転移させる時に・・・・初めて泣いたのを見た」
ゴツッ。
おじさんにゲンコツを食らう。
バキッ。
長兄に頬を殴られてベッドを転がり落ちる。
ドカッ。
次兄が腹に蹴りを入れる。
連携の取れた３コンボだ。
「「「娘(妹)を泣かすのは許さん!!」」」
オーガが３体現れた。
「あらあら、手加減できて偉いわね」
おばさんはのほほんとしてるが、確かにこの３人が本気を出したら俺の全身は粉砕されていたはずだ。
「ゲホッ、ゴホッ・・・・ごめん」
素直に謝る。
これで俺はまた家族を失・・・・。
「ま、俺の娘は可愛いからわざと泣かしたくなるのはわかるが、父親の俺でも娘が５才の時で卒業したんだ。
本当に泣かすな。
次は刺す」
いや、娘が５才になるまではわざと泣かしてたのかよ。
でも本当に刺すんだろうな。
「俺だってミルティアが７才の時にプリンタルトを横取りして以降は泣かした事がないんだ。
これから気をつけろ。
次はお前のを横取りするぞ」
長兄とミルティアは15才差だ。
当時22才の良い大人が７才の子供のタルト横取りしたのかよ。
俺は甘い菓子が苦手で大抵譲ってるはずだが、何を横取りする気だ。
「俺は10才も違うがミルティアには泣かされた事しかない！
やるじゃねえか！
でも妹は泣かすんじゃない。
甘えて色々押しつけるもんだ。
次は可愛く甘えてやれ」
次兄はツッコミどころが多すぎだろう?!
何も言えねえ。
とりあえず甘えればいいのか?!
次、という言葉に許されたのだと知る。
「ふふふ、皆困った男達ねぇ」
おばさん、同感だ。
ん？
俺の方も見てないか？
俺も困った男入りか?!
いや、否定はできないけど・・・・え、何か嫌だ。
だけど、もう泣かさないと心と家族に誓う。
その為にやるべき事をやろう。
「頼みがあるんだ。
その・・・・聞いて欲しい」
ここに来て、初めて甘える為の頼み事をする。
「「可愛い息子からの頼み事なら喜んで」」
「「もちろんだ、弟よ」」
理由すら聞かず、信頼されている快い返事に目頭が熱くなる。
ああ、ミルティア。
お前が俺を見つけて与えてくれたこの場所はこんなにも温かい。
そうして２ヶ月後、心身を回復させた俺は再び旅に出た。
「父さん、母さん、兄貴達。
行ってきます！」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
剣聖ではなく、ただのカインとして。
そして俺が家族の元を再び旅立って数ヶ月後、国外追放された元王太子と異母兄はどこぞの国境の山で魔獣に食い散らかされたような無惨な状態となった遺体で見つかったようだと風の噂で聞いた。
それを耳にしても、もう特に何の感慨も浮かばなかった。
ただ、王太子も異母兄もそれなりの魔法や剣術の使い手だ。
魔獣に後れなど取るだろうか。
それだけは疑問に感じた。
その後ギルドが森の正確な測量を行い２国間の結論が出るまでには２年を要した。
ギルドが分けた土地が１番少なかったのは冒険者である俺を害した元王太子のいた俺の祖国で、その後ミルティアの次兄が新領主に任命された。
恐らくは俺やミルティアが辺境領主の子供で、１番周りからの反発がないと判断したからだろう。
次兄は、というと。
「結局辺境領主かよ！
元でも死の森に女なんか来ないだろ、ちっくしょうー！
世の男共め、日照ってしまえー！」
そんな泣き言やら呪いの言葉を吐きながら地元の辺境領から新辺境領へと引っ越したらしい。
そんな次兄も35才目前でどうにか嫁を見つけ、40才目前だった長兄と同時期に結婚するが、それはまだまだ先の話だ。
ギルドは所属する冒険者がいつ飛び出してくるかわからない魔竜の討伐と、瘴気の満ちる死の森を復活させたとして世界中からの栄誉といくつかの国から多額の報奨を、そして交渉料を森に隣接する２つの国から得た。
下手に事が大きくなった為に、人件費を差し引いた報酬をミルティアへ半分譲って体面を保ったらしい。
だがギルド本部を建て替えたくらい潤ったのは間違いなく、瘴気や魔竜の存在に脅威を感じていた各国にかなりの恩も同時に売れたようだ。
ただ、俺はこの時点でもまだミルティアを見つけられていない。
けれど何年かかっても、もう諦めてやれないんだ。
ごめんな、ミルティア。
思わずミルティアの手紙をくしゃりと握りしめ、慌てて戻す。
何だよ、夢で見たって。
かつて冤罪で殺されたって。
俺が魔竜王になるって。
「っざけんな、馬鹿野郎」
俺が自分の為だけに生きてる間に、アイツはずっと俺の為に生きてたのかよ。
否定したいのに、現実に起こった事を考えたら否定できない。
もしミルティアが関わらなければ、この家族に出会わなければ・・・・。
「あの子ったら本当に一途なんだから。
でもそれはそれで幸せよね」
「どこがだよ！
俺は・・・ずっと何も知らずに・・・・挙げ句アイツに剣を向けたんだ！」
胸が苦しい。
ミルティアに何をしたんだ、俺は?!
「で、ボコられたんだろう？
やっぱり俺の娘は最恐だな」
「ふふふ、ミルティアってば頭は良いのに相変わらず脳筋よね」
親達は明るく軽すぎるだろう！
しかもおじさんは何で毎回ドヤ顔なんだよ！
「まあミルティアが惚れた男可愛さに勝手にやったんだからいんじゃないか？」
「言えてる。
本人はけっこうノリノリで楽しんでたに金貨１枚！
「それ、賭けにならないだろう」
「言えてるな」
「「あははははは」」
兄達含めて明るすぎるぞ、この家族は!!
「泣いたんだ」
「「「ん？」」」
俺の一言に男達がピタリと動きを止めた。
「ミルティアが俺を転移させる時に・・・・初めて泣いたのを見た」
ゴツッ。
おじさんにゲンコツを食らう。
バキッ。
長兄に頬を殴られてベッドを転がり落ちる。
ドカッ。
次兄が腹に蹴りを入れる。
連携の取れた３コンボだ。
「「「娘(妹)を泣かすのは許さん!!」」」
オーガが３体現れた。
「あらあら、手加減できて偉いわね」
おばさんはのほほんとしてるが、確かにこの３人が本気を出したら俺の全身は粉砕されていたはずだ。
「ゲホッ、ゴホッ・・・・ごめん」
素直に謝る。
これで俺はまた家族を失・・・・。
「ま、俺の娘は可愛いからわざと泣かしたくなるのはわかるが、父親の俺でも娘が５才の時で卒業したんだ。
本当に泣かすな。
次は刺す」
いや、娘が５才になるまではわざと泣かしてたのかよ。
でも本当に刺すんだろうな。
「俺だってミルティアが７才の時にプリンタルトを横取りして以降は泣かした事がないんだ。
これから気をつけろ。
次はお前のを横取りするぞ」
長兄とミルティアは15才差だ。
当時22才の良い大人が７才の子供のタルト横取りしたのかよ。
俺は甘い菓子が苦手で大抵譲ってるはずだが、何を横取りする気だ。
「俺は10才も違うがミルティアには泣かされた事しかない！
やるじゃねえか！
でも妹は泣かすんじゃない。
甘えて色々押しつけるもんだ。
次は可愛く甘えてやれ」
次兄はツッコミどころが多すぎだろう?!
何も言えねえ。
とりあえず甘えればいいのか?!
次、という言葉に許されたのだと知る。
「ふふふ、皆困った男達ねぇ」
おばさん、同感だ。
ん？
俺の方も見てないか？
俺も困った男入りか?!
いや、否定はできないけど・・・・え、何か嫌だ。
だけど、もう泣かさないと心と家族に誓う。
その為にやるべき事をやろう。
「頼みがあるんだ。
その・・・・聞いて欲しい」
ここに来て、初めて甘える為の頼み事をする。
「「可愛い息子からの頼み事なら喜んで」」
「「もちろんだ、弟よ」」
理由すら聞かず、信頼されている快い返事に目頭が熱くなる。
ああ、ミルティア。
お前が俺を見つけて与えてくれたこの場所はこんなにも温かい。
そうして２ヶ月後、心身を回復させた俺は再び旅に出た。
「父さん、母さん、兄貴達。
行ってきます！」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
剣聖ではなく、ただのカインとして。
そして俺が家族の元を再び旅立って数ヶ月後、国外追放された元王太子と異母兄はどこぞの国境の山で魔獣に食い散らかされたような無惨な状態となった遺体で見つかったようだと風の噂で聞いた。
それを耳にしても、もう特に何の感慨も浮かばなかった。
ただ、王太子も異母兄もそれなりの魔法や剣術の使い手だ。
魔獣に後れなど取るだろうか。
それだけは疑問に感じた。
その後ギルドが森の正確な測量を行い２国間の結論が出るまでには２年を要した。
ギルドが分けた土地が１番少なかったのは冒険者である俺を害した元王太子のいた俺の祖国で、その後ミルティアの次兄が新領主に任命された。
恐らくは俺やミルティアが辺境領主の子供で、１番周りからの反発がないと判断したからだろう。
次兄は、というと。
「結局辺境領主かよ！
元でも死の森に女なんか来ないだろ、ちっくしょうー！
世の男共め、日照ってしまえー！」
そんな泣き言やら呪いの言葉を吐きながら地元の辺境領から新辺境領へと引っ越したらしい。
そんな次兄も35才目前でどうにか嫁を見つけ、40才目前だった長兄と同時期に結婚するが、それはまだまだ先の話だ。
ギルドは所属する冒険者がいつ飛び出してくるかわからない魔竜の討伐と、瘴気の満ちる死の森を復活させたとして世界中からの栄誉といくつかの国から多額の報奨を、そして交渉料を森に隣接する２つの国から得た。
下手に事が大きくなった為に、人件費を差し引いた報酬をミルティアへ半分譲って体面を保ったらしい。
だがギルド本部を建て替えたくらい潤ったのは間違いなく、瘴気や魔竜の存在に脅威を感じていた各国にかなりの恩も同時に売れたようだ。
ただ、俺はこの時点でもまだミルティアを見つけられていない。
けれど何年かかっても、もう諦めてやれないんだ。
ごめんな、ミルティア。
