空はよく晴れていて、この季節にしては風も穏やかで過ごしやすい日だった。

これがピクニックへの道のりなら素敵だったけど、ハナ達が向かうのは地獄だ。

車内はお葬式みたいな雰囲気で、ハナの横で夕海は俯いてジッとしてる。

荷室の彼氏はもっと騒ぐかと思ったけれど案外静かにしてくれてるみたいだった。

「あ、そう言えば」

「どうかされましたか?」

「ハナの鞄」

「これですね」

男性が足元から黒い小さめのボストンバッグを持ち上げて、ハナに渡してくれた。

「ありがとうございます」

受け取って中身を確認する。
ハナが準備した時と変わりは無い。

太くて長めのロープ。
先が輪っかになっている。

クラスのみんなに使った毒薬の余りと、ママに使ったのと同じ毒薬。
それと、手錠。

「それ…何…」

「ハナと夕海の未来にとっても大切な物だよ」

「…そう」

それから山に到着するまでは誰も何も喋らなかった。

これが最後なら夕海ともっと言葉を交わしても良かったんだけど、ハナでも「最後」ってなったらさすがに感傷に浸るらしい。

どこで間違ったとかそんな話じゃなくて、
今やってることへの後悔すら微塵も感じてなくて、

ただ夕海とはこれでお別れなんだってことだけが悲しいと思えた。

好きだよって、そんなことを今更ちゃんと目を見て伝えたら夕海はどんな顔をするだろう。

伝えたいことも信じて欲しかったこともそれだけだったのに。