草食男子は本性を隠していました。

「み、水樹君……は、離して、くれない?」

 これじゃあ先生呼びにいけないよっ?

 体調が回復したと言えど、まだ完全に治り切っていないだろうし、早退したほうが良いはず。

 だけど水樹君は力を強めるばかり。

「は、離し――」

「姫奈、可愛い。」

 離して、と言おうとしたけどその言葉は水樹君の言葉によって遮られてしまった。

 ……い、今、水樹君、何て……?

 突然言われた言葉に私は何回も瞬きを繰り返す。

 水樹君、今私のこと呼び捨てで、かっ、可愛いって……言った?

 あの、いつも敬語の水樹君が……?

 い、いやいやきっと幻聴だよ……うん、そうに違いない。

 自分に言い聞かせるようにそう繰り返すけど、水樹君の言葉のせいで考えることができなくなってしまった。

「あーもう、姫奈何でそんなに可愛いの?」

 甘く優しい声でそう囁かれ、あからさまにビクッと肩を震わせる。

 耳の近くで言われたことだから吐息が当たって……く、くすぐったいっ……。

 でも恥ずかしさなんてその比じゃなくて、私は顔に熱が集中するのを感じながら抵抗を試みた。