い、痛いのは嫌だっ……と瞬時に思い、私は恥ずかしさを我慢して勢いで言い放った。

「だって……名前呼びはまだ、恥ずかしいし……慣れてないからっ……。」

 男の子を名前で呼んだことがないから、急には無理だよっ……。

 抗議するように大きな声で言ったけど、水樹君は何故か面白そうに口角を上げて口を動かした。

「へぇ……だったら尚更言ってほしいな。」

「なっ……む、無理なものは無理なの……!」

 名前呼びだなんて私には無理……!

 そう考えて下に視線を動かすと、今度はさっきと真逆の言葉が飛んできた。

「ふーん……言ってくれたらご褒美あげようと思ってたのに。」

 ご、ご褒美……?

 うー、ご褒美も気になるけど流石になぁ……。

 一瞬そう思ったけど……やっぱり好奇心には勝てなかった。

「か、彼方、君……。」

 小さくて聞こえたか聞こえてないかの声量だったけど、ばっちり水樹君には聞こえていたようで。

「ふふっ、じゃあご褒美あげなきゃね。」

 と言って、私の唇にキスを落としてきた。