「ねぇ姫奈、何で俺のこと苗字呼びなの?」

「えっ?」

 ある日の保健室内で水樹君にそんなことを突然聞かれてしまった。

 保健室に何故いるかというと、今先生が会議に出席していてお留守番を頼まれたから。

 一人で寂しいって思ってたら、水樹君が来てくれて今に至る。

 ちなみに水樹君、私と二人きりの時は前髪をいつも上げている。

 私的にはいつも上げてたほうが良いんじゃ……と思ったけど、プライバシー的にどうかと思って言うのはやめた。

「姫奈、聞いてる?」

「き、聞いてるよっ……?」

 確か水樹君の呼び方の話だったよね?

 うーん、言われてみれば変なのかもしれない。

 付き合ってもう一週間経つのに、私は未だに水樹君と呼んでいる。

 水樹君の下の名前は知ってるけど、でも私にはまだ名前呼びはハードルが高すぎるっ……。

「ねぇ、何でなの?」

 うっ、何でって言われましても、これは言えない……。

 そうやって口を閉じていると、こんな言葉が飛んできた。

「言わないとお仕置きね。」

「えっ……?」

 お、お仕置き……?