草食男子は本性を隠していました。

 私は気持ちを隠すようにわざとらしく声を上ずらせて、カーテンを開けた……その時。

「咲間さん、もう少しいてください……。」

 と、水樹君に呼び止められた。

「え、でも……早退したほうが良いよ?」

 そう言ったけど、水樹君は「もう少しだけですから。」と言ってお願いをしてきた。

 うっ、そんな捨てられた子犬のような瞳で見つめられると……。

「わ、分かった。もう少しだけだよ……?」

 結局こうなってしまうんだよなぁ……。

 渋々私が了承すると、水樹君はこれほどかってほどの可愛い笑みを浮かべて喜んでいた。

 小さくガッツポーズまでしている様子を見るに、相当嬉しいんだろう。

 でも……私なんかがいても大丈夫なんだろうか。

 私にできることはもう全部やってしまったし、後は水樹君を先生に引き渡すだけ……なんだけど。

「み、水樹君?私がいても役に立たないよ?」

 恐る恐るそう聞いてみると、水樹君はまだ辛そうな顔をしながらも首を左右に振った。

「ううん。咲間さんがいてくれたら気が楽なんです。だからそんなこと思わないでください。」