沢本……あいつどこまで人のこと喋って……。

 はぁ、とため息を吐きたくなったけどこの際どうでもいい。

 姫奈は……俺のだって、知らしめてやらなきゃ。

 そう決意をして静かに拳を握りしめる。

 その時、驚くべき言葉が飛んできた。

「あ、そうだ。水樹君、盗み聞きはあんまりしちゃダメだよ。気をつけなきゃ。」

「な、何でそれをっ……!」

 この人……どこまで知っているんだろう。

 さっきはありがたいと思っていたけど……ちょっと怖くなってきた。

「え~?内緒に決まってるでしょ~?じゃね~。」

 結局俺の言葉は躱され、姫奈のところへと戻っていった灯さん。

 ……まぁいいか。

 沢本……いやあいつだけじゃない。他の奴にも姫奈は俺のだって……教え込まなきゃ。

 俺はひっそり、騒がしい教室内でそう考えていた。