こういう時、何もできない自分がもどかしい。

 クラス内では陰キャを装っているから下手な動きが出来ずにいた。

 正確に言えば、動くことはできる。だけどそれで姫奈を面倒ごとに巻き込みたくない。

 他の人にも迷惑はできればかけたくない。

 だけどこうしているうちにも姫奈は、沢本と仲を深めている。

 一方的に沢本が話しかけているだけだけど、いずれは……。

 いや、変な考えを持つのはやめよう。

 俺は邪念を振り払うように首を左右に振る。

 だけど不安や焦りはそう簡単には消えないもので、余計に心配になってきた。

「水樹君、ちょっと話さない?」

 その時、頭上から俺を呼ぶ声が聞こえた。

 面倒だな、と思いつつ顔を声のしたほうへと向けるとそこには姫奈といつも一緒にいる……意味深な笑みを浮かべている灯さんがいた。

「な、何ですか?」

 灯さんがわざわざ話しかけてくるだなんて、何の用だろう。

 純粋に気になった俺は何も考えず、彼女にそう尋ねた。

 灯さんはそんな俺の疑問を聞いて、不敵に口角を上げてみせた。