草食男子は本性を隠していました。

　きっと沢本君と付き合っても私は水樹君を想い続けてしまう。

　そんなことになって沢本君を傷つけたくない。

　完全に自己中心な考えだけど、私はそう思ってしまった。

　なんとなく返事が怖くてぎゅっと目と瞑る。

　だけどそんな私に聞こえたのは……優しい声だった。

「うん、咲間さんならそう言うと思ってた。俺じゃ水樹には勝てないんだよね。」

　悲しそうに呟く沢本君の表情が、胸を苦しませる。

　でも……私には、水樹君しか、いないから……。

　だから……。

「本当に、ごめんね。」

　早くここから去ってしまおう。

　そう考え踵を返したとき、沢本君に呼び止められた。

「咲間さん……俺、諦めないから。絶対水樹に、勝ってみせるから。」

　そう言ってくる沢本君にまた胸が痛む。

　私にここまで必死にならなくていいのに……。

　だって私、沢本君を傷つけちゃったんだよ？水樹君のことしか、考えてないよ？

　それに私は可愛くもなんともないしずば抜けた取柄があるわけでもないのに、どうして沢本君がここまで必死になるのかが分からない。

「……っ、ごめんね。」