草食男子は本性を隠していました。

 訳が分からず沢本君のほうを向きながらそう尋ねる。

 ……え?

 その時に見た沢本君の顔は……驚くほど真っ赤になっていた。

 どういうことだろう、と考えてみるけれど答えはすぐに分かることになった。

「……咲間さん、君のことが好きです。俺と付き合ってください。」

「…………え?」

 今私、告白された……?

 言葉を理解するまではよく分かっていなかったけど、理解してからは早かった。

 告白なんて、初めてされた……。

 ……でも、どうしても素直には喜べなかった。

 私が好きなのは……水樹君だから。

 だから、沢本君の気持ちには申し訳ないけど……答えられない。

「沢本君、私――」

「咲間さん、全部分かってるから。」

 断ろうと言葉を紡ぎ始めた私に、慌てたような沢本君の声が被って聞こえる。

 分かってるって?

「何の、事なの?」

 分かってるという言葉が何を指しているのかが分からず、静かに尋ねる。

 自分の思っていることを素直に沢本君に伝えると、沢本君はあははと諦めたような笑みを零していた。

「分かってるんだ。咲間さんは水樹が好きなんだよね?」