そんな夢みたいなこと、起こるわけが……。

「いーや、絶対そうに決まってる!じゃないと押し倒して可愛いとか言わないでしょ!」

「……ちなみに、その根拠は?」

 絶対あれだろう……と思うけど念の為に聞いておく。

 そう聞くと、日葵はいつものように「当たり前でしょ?」と言う顔をしながらこう言い放った。

「もちろん、小説と漫画!」

 ですよねー……言うとは分かってたけど……。

 日葵は基準が恋愛小説か恋愛漫画だからこう言うってのは見えてはいた。

 だけどここまではっきりと言われるとは……。

「小説や漫画みたいなこと、現実で起きるわけ――」

「いや、絶対に当たってるから!姫奈、私のこと信じて!」

 し、信じるも何も……。

「絶対そんなこと起きるわけないのに……。」

 私は半ば自分に言い聞かせるようにして、ぷくーっと頬を膨らませた。

 もちろん、そんなことがあればいいなとは考えるけど……両思いになれる人なんてほんの僅かだから私はないと考えている。

 だけどどうしても、あの熱っぽい眼差しは……忘れられない。