あの日……水樹君に押し倒された日から数日が経った。

 水樹君にあの日のことを念のため聞いておいたけど、水樹君は……。

『咲間さんが保健室まで運んでくれたのは、覚えてますけど……そこからの記憶は曖昧で……。』

 と、言ってたから大丈夫……なはず。

 うん、きっと大丈夫だ!あんなこと水樹君がするとは思えないし……。

 あの日のように私は無理やりそうこじつけて、自分を納得させようとしていた。

「……い、おーい。」

「ふぇっ?」

 突然呼びかけられてはっと我に返る。

 目の前で頬杖をついて私を呼んでいたのは一番の親友の灯日葵(ともりひまり)だった。

「ひ、日葵?どうしたの?」

 驚いて尋ねると、日葵は何故かはぁっ……と勢いよく息を吐いた。

 え、私、何かしちゃった……?

 そう考えたけど、日葵の言いたいことは少し違ったみたいで。

「姫奈が悩んでそうな顔をしてたから、声かけたの?悩み事なら聞くけど。」

 う、うーん……悩み事って言ったら悩み事、なのかな……?

 だけど「水樹君に押し倒された。」だなんて言えるはずないっ……。