草食男子は本性を隠していました。

 姫奈のあの驚いたような顔……天使かと本気で思った。

 それに姫奈、触れてみると華奢さがよく分かってぎゅっと強く抱きしめたら壊れそう。

 勢い任せにしてしまったキスも……どんな甘味よりも甘かった。

 あの小さくてピンクの唇に触れたかと思うと、どうしても笑みが零れ出てきてしまう。

 腕も細くてパーツの一つ一つが小さくて……あー、本当にどうかしちゃいそうだ。

 姫奈が可愛すぎて、もう本当……大好き。

 きっと姫奈は俺がこんなことを思ってるなんて全く知らないんだろうな。

 こんな陰キャが狙ってるってことも……知らないと思う。

 だから……待っててね、姫奈。

 絶対に、君を振り向かせてみせるから。



 結局その日は早退することになって、今姫奈が俺の荷物を教室に取りに言ってくれている。

 申し訳ない、と思いながらもその事実が嬉しすぎて俺は頬の緩みが抑えられなかった。

「何気色悪い顔してんだよ、彼方。」

「……気色悪いって失礼じゃない?」

 遠慮もなしにそう言ってくるのはこの学校の養護教諭の古賀辰巳(こがたつみ)だ。