「もっかい言ってい?」
「え…え、っと」
「───好きです」
さっきと全く同じ表情で振り返ると、同じ言葉を私に投げる。冗談でも、ましてや友達の意味でもない。
───私と一緒の“好き”だ。
「私も好き!」
きっと頬はゆるゆる溶けていて、好きって顔から出るほどだったと思う。
自分の中に隠しておさまりきらないほど、嬉しい。
「…かわいいです」
「……ありがとう、です」
「───片良瀬、一年の時集会で倒れたりしてたじゃん。それで、ヒーローみたいにアイツが助けた」
「うん、小学校から一緒だからね」
「カッケーなって思ってたんだよ。そうやってずっと見てたはずなのに、いつの間にか、片良瀬に目がいってた
…見てたのは、片良瀬を助けたかったからなんだろうな」
夏には魔法がかかっている。
キラキラしないはずのものが輝いて見えたり、雨の後に端が見えないくらい大きな虹をかけてしまったり。
ほら、この保健室にも。
「片良瀬のこと、俺に助けさせて」
「ふふ、よろこんで!」
夏が終わってもこの魔法はとけないから。