「───……、」
朦朧とする意識のなか、幻影のようなものを目にした。
この場所、同じ場所で、わたしを腕に抱く瀧がお兄ちゃんに変わって。
『…おまえがすきだ。────……誰よりも…心から愛してるよ、…翠加、』
震える声でひとつひとつを伝えるお兄ちゃんが見ている存在は、わたしじゃなくて翠加さんなんだと。
わたしのなかに、かつての女の子の気持ちがまた入ってくる。
爽雨くん、爽雨くん、そんな顔をしないで爽雨くん。
ありがとう爽雨くん。
大好きだよ、私もずっとずっと大好きだったの───…。
『翠加……、すいか、…っ、』
泣いている。
爽雨くんが、私を抱きしめて泣いている。
私も伝えたかった。
好きって、愛してるって、同じ言葉を伝えたかった……。
唇に伝わる、悲しくて幸せで、悲痛なほどに優しい初めて。
それすら反応できないまま、身体はふわっと軽くなっていく。
─────これが、かつての翠加さんが見ていたお兄ちゃんだったんだ……。
「みうさん、おきて、起きて…っ、たのむから寝ないで……っ、」
「ッざけんなや爽雨…ッ!!おいっ、寝るんちゃう、寝たらマジで死ぬぞ……っ!!」
あぁ、もう。
返事ができそうにない……。
けれど、お兄ちゃんですら知れなかった真実をこの目で確かに見れたこと。
もし天国で会えたら必ず伝えようって、わたしは意識をそっと手放した───。
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