彼は崩れ落ちるように膝をついて、ポロポロと涙を落としてゆく。
もう誰もあなたを責めてはいないよ。
最初から責めてなんかいないんだよ。
瀧と約束なんかしなければよかった、そんなことも1度だって思ってない。
「謝ることも……できなかった…っ、」
誰にだって抱えている後悔はあって、どうしてああしてしまったんだろうって苛(さいな)まれるときはあって。
それでも彼の場合は、もう2度と謝れない人に対しての大きな後悔ばかりだから。
何よりも自分にとってかけがえのない大切な人で、交わした約束があって。
守りたい約束があって、守ると誓った約束があって。
だけど、結果として守ることができなくて、挙げ句失って。
それからずっとずっと残って、自分で自分のことを許せるほど器用でもなくて。
「───瀧、翠加は爽雨に惚れてた」
すべてを許す声で、久遠くんは言った。
それは瀧と同じことをしようとしたわたしにも伝えられた言葉だ。
「…嘘、つくなよ…、姉さんが好きなのはあんただって……爽雨さんも言ってた、」
「嘘じゃない。なんで翠加が最後に“アヤハ”を呼んだのか、よく考えてみろよ」
そう、わたしも考えた。
考えて気づいてしまったの。
その3人にしか通じない名前だったから、あえて翠加さんは言ったこと。



