武力ではどうにもならない。
武力でしかカタをつけることを知らなかった総長が、私に話し合いを求めていた。
「……爽雨さんが自殺する直前、おれに電話がかかってきたんですよ、」
そんななか、息を切らしながらもぽつりとこぼした瀧。
「…電話…?」
「…泣いてました、あんな爽雨さんを見たのは初めてで……、そこで、おれは久遠 綾羽という男のことを知った」
なにをそこで彼に伝えたんだろう。
飛び降りる寸前、最後に電話をかけた後輩にお兄ちゃんは何を託したんだろう。
「約束したんです…、おれが、必ず殺すって、……その約束くらい守らないと…おれは、」
彼にとっての“約束”という言葉の重さは、きっとわたしたちには計り知れないもの。
わたしを抱きしめる瀧は、わたしに笑いかける瀧は、いつもいつも心では泣いていた。
ずっと誰かに謝りつづけていて、わたしはそれを感じるたびに悲しくて。
「───許されないって?」
「っ…、」
「瀧、あなたはずっと…なにに、だれに、許されたいの…?」
一歩、一歩と、近づく。
もしかすると今の瀧はもう、わたしが知っている瀧じゃないかもしれない。



