だけど、わたしのときと違うことはひとつだけ。
彼は、佐狐は、どこか本気で殺るんじゃないかという空気感があった。
「俺も翠加のこと、ちょっと好きだったって知ってた?」
「……は…?」
「だから死んだときはね、かなり気が狂いそうだった」
この化け狐の心も奪えてしまう翠加さんは本当にすごい人だったんだと。
わたしはそんなことをぼうっと考えてしまっていた。
どこか小難しい男の子を手懐けてしまう才能でもあるのかな…。
お兄ちゃんだって佐狐だって、一筋縄にはいかないタイプだから。
「でも翠加は爽雨くんに託したんだ俺。
…最期の日のあんなの見ちゃったらさ、勝てないよ」
思い返せば佐狐との会話は、いつも変だった。
私に新しいことをいつも教えてくれる。
“爽雨”に対するものじゃなく、まるでそれは新たに加わったメンバーに説明してくれるみたいに。
「なのに爽雨くんまで死んじゃってね。…“アヤハ”って人のせいで」
彼の日本語は早すぎる。
饒舌な発音だから、ゆっくり戻って解読しなければいけない。
なにを考えているのか探る余地すら一切与えない狐顔は、わたしにニコッと微笑んだ。



