「…殺してやる、…おれがあんたを今ここで殺す、」
「はははっ!!できんのかァ?俺たちはやべぇモン使うぜ?」
やばいもの……?
そう言って鬼木が取り出したものは、わたしが持っていたものよりも遥かに刃の鋭いナイフだった。
それはサバイバルナイフ。
だけど、そんなものに一切動揺していない瀧は予想の範囲内だったのだろう。
「…遅くなって、怖い思いをさせてごめんなさい」
地面に横たわるわたしの傍に膝をついて、落ち着いてゆっくりと身体に自由を与えてくれる。
「万が一、変な匂いを感じたらこれで鼻を押さえてください。そういうものも撒かれるかもしれないです」
脱がされかかっていた身体を隠すように、瀧は自分が着ていたブレザーをわたしに羽織らせて、そっと首にはマフラーを巻いてくれる。
いつもの瀧から香る柑橘系に混じった、キンモクセイの匂い。
それだけでここまで来てくれた過程が幻のように再現された。
「…たき、」
震えてる、彼はすごくすごく震えている。
押し潰されそうな恐怖に負けないように、わたしに安心を与えようとしてくれているけれど。
もういいんだよ、もう十分すぎるよ瀧。



