その声ひとつでナイフなんかプラスチックのオモチャに変わってしまう。
力だって入らないわたしは、ただ激しくて甘いそれを受けつづけてるだけ。
「キスでこんないいってことはカラダの相性はもっとってことだな、俺たち」
この人はいじわるだ。
自分本意で勝手にしてくるくせ、悔しいほどに恨めないのは、ずっとあたたかな目をして見つめてくれるから。
唇を強ばらせて閉じたって、その目に見つめられてしまえば無意味。
固く固くこぶしを作ったって、パシッと取られて柔く柔くほぐしてくる。
「…なんでそんなかわいい顔してんの。そんなに俺を殺せるのが嬉しい?」
そっちこそ、どうしてそんなにも喜んでるの、嬉しそうなの。
わたしに殺されるんだよ、あなたは。
「…久遠…くん、」
「…なに?」
「ぼくは、おまえが嫌いだ、」
混ざっている。
もう爽雨なのか深雨なのか分からない。
「じゃあお前は?」
「…、」
「お前は俺のこと、嫌い?」
それは深雨を見つめてくる目。
まっすぐまっすぐ、わたしを捕まえてくる。



