「そんな顔すんなって、───…深雨」
「っ…、」
その名前で呼ばないで。
そんな声で呼ばないで。
揺らぐ。
決意が揺らいでしまって、心の奥に封じ込めた気持ちが出てきそうになる。
「…お兄ちゃん…は、久遠 綾羽に殺されたの、」
「…あいつがそう言ってたの?」
「そうだよ。最後まで…お兄ちゃんは周りに馬鹿にされて死んでいった、」
わからないよ、なぜ翠加さんがアヤハを選んだのかも。
なぜ最期の最後までアヤハの名前を呼んだのかも。
なにも、なにひとつ分からないけれど。
きっとそれはお兄ちゃんにとって、胸が張り裂けるくらいに悲しい現実だったことだけは分かる。
「っ、…久遠、くん」
「やめろ。それ以上言ったらお前は俺を刺せなくなる」
言葉とは裏腹に、まるでわたしのそんな声に呼ばれたようにソファーから立ち上がってゆっくり歩み寄ってくる。
動けない……、
前に進むことも、うしろに逃げることも、なんにもできない…。
「まさかRain shadowが今日で終わるなんて思ってなかった」



