ザァァァァァァ───…。
ピカッ、ゴロゴロゴロ───!
激しく打ちつける雨。
明かりの消えた教室では、時折として雷の光に顔の輪郭が映し出される。
「…わたしは、ここに来た理由がもうひとつある、」
暗闇のなか、わたしはナイフを手にしていた。
喉が渇いて仕方なくて、ひとつひとつ言葉を紡ぐだけでこんなにも体力を使うものなんだと。
「もうひとつ?」
「…久遠 綾羽を……、殺すこと、」
差し出した、生徒手帳。
いちばん最初のページに載っている顔写真と、間違いのない名前。
「……、」
初めて彼が息を飲んだ。
わたしがアジトへ向かったとき、すでにソファーに腰を下ろしていて。
ナイフを取り出したわたしを見ても顔色すら変えなかったのに、ここで微かに控えめな喉仏が動いた。
「…やられた、参った」
甘い声で、困ったように言う。
「まさかお前だったなんて。…刺せんの?俺を」
「っ……、」
「…刺せるのってか、刺すのか。それしかお前の道はなさそうだし」
カタカタカタと、情けないくらいに焦点の合わないナイフを見てそう言うなんて。
まるでわたしの背中を押してくれているようにも聞こえてしまう。



