涙の跡、滲む字。

彼はどんな姿で、どんな顔をして、だれを想いながら綴ったのだろう。


それを考えただけで胸が苦しいほどに痛くなるから、わたしの行動は正しいものなのだと思える。



「おい、なんか今日の水本さん…いつもより気合い入ってね…?」


「あぁやべーわ、さすが参謀。俺たちも足引っ張ってられねーな」


「そうだな」



気合いじゃない、これは殺気と言うの。

すべてを覚悟した者だけが出すことのできる、身体からのサイン。



「爽雨、帰らへんの?」


「…僕はちょっと用事があるから」


「ほんならオレも付き合ったるわ」



下校チャイムが過ぎても帰る素振りすら見せないわたしの頭、ぽんっと乗せられた手。

その手をパシッと掴んで下ろさせる。


そんなことをしたのは初めてだったため、赤い髪の友達は驚いていた。



「いい、おまえは帰れ赤矢」



赤菜ちゃんと赤帆ちゃん、赤太くんは元気?

相変わらず賑やかに毎日やってる?
また今度遊びに行ってもいい?


いつものわたしなら、そう言っていた。