この日記を見つけてくれた妹よ、
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俺の代わりにあいつを殺してくれ。
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お兄ちゃんの代わりに、あいつを殺して、おねがいだ深雨。
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「……っ、」
あなたはどれほど苦しい思いをしたんだろう。
鬼木の言っていたことが本当だったのなら、愛した女性を失ったうえに最期まで馬鹿にされつづけて。
負け犬なんかじゃない。
こうして妹のわたしにすべてを託して自ら命を絶ったお兄ちゃんは、ぜったい負け犬なんかじゃない。
「なんで…泣いてんの、」
そんなの悔しいからだ。
こんなにも近くにいたのに気づけなかった自分が。
少しでもこの男と過ごす毎日を楽しいと思ってしまった自分が。
この男に対して少しでも、少しでも淡い感情を抱きそうになってしまっていた自分が。
「っ、」
ドアの前、鱗模様のマフラーが一瞬だけ視界をちらつかせて。
「…だいっきらい……、」
「───、」
涙いっぱいで今にも倒れそうな身体をどうにか動かして、立ち尽くす男を通り抜けるように走った。



