Rain shadow─偽りのレヴェル─

綾都side




「池田(いけだ)さん、」


「あっ、綾羽く───綾都くん、いまお帰りですか?」



そこは久遠総合医療センター。

この街でいちばん大きいと言われる病院だった。


受付に顔を出した俺に“綾羽”と言いかけた看護師は、この病院に古くからいる昔からの顔馴染みでもあって。

けれど視線で「俺は綾都だ」と伝えると、まだ慣れない中でも訂正してくれる。



「院長と副院長も揃っておられますよ。ご挨拶に?」



そして名前のとおりだ。

俺の父親はこの病院の院長、母親は副院長。


その一人息子が俺、久遠 綾羽。



「…いや。ICUの様子を聞きに来ただけだから」


「…そちらも変わりなく、です。意識の回復は難しいと…先生たちもおっしゃっていました、」


「…そっか、」


「けれどきっとお友達の声は聞こえているはずです。お会いになられますか?」


「うん、そうする」



ICUとは───いわゆる集中治療室のこと。

そこは限られた医者と人間しか立ち入ってはならない場所であり、重篤(じゅうとく)患者を24時間体制で管理する病室。


こうして俺が来たくもない大嫌いな病院にわざわざ通う理由は、これしかなかった。