『綾都。……俺、翠加のことが好きだ』


『……』


『…驚かないのかよ』


『…いや、まぁ、だろうなって思ってたし』



逆になんでそんなびっくりしてんの。

あんな分かりやすい奴なんかお前くらいだし、翠加が鈍感で良かったなって言いたいくらいだ。



『…でもたぶん、翠加はお前のことが好きだろうけど』



綾都───と、呼ばれる名前には未だに慣れなかった。

この名前で生きると決めたのは俺だったし、両親のためにそうじゃなきゃいけないとしても。


やっぱり心のどこかでは本当の名前で呼んでほしいとも思ってしまう。



『…いや、翠加もお前のことが好きだろ』


『それは仲間としてだよ。あいつは誰に対してもあんな性格だけど、綾都を見るときは女の顔してるし』


『……』



そうでもねぇけど。

お前も鈍感というか、女という生き物に疎(うと)いんだと思った。


俺と2人のときはいつも爽雨の話ばかりだし、爽雨に心配されることをあいつも本当は喜んでいる。



『…おまえ、確か双子の妹がいるって言ってたよな』


『あぁ、いるよ。昔っから泣き虫の』


『……写真とかねぇの』