「よお、死んでなかったんだなお前。俺があんなに現実を見せてやったってのに」
今にも飛びかかる勢いの久遠くんを止めたのはわたし。
「来るな」と、参謀だからこそ言えた命令だった。
「…げん、じつ……?」
「おいおい、まさか忘れたってのかよ?あんなに発狂してただろうが」
発狂……?
あなたはお兄ちゃんに何を言ったの…?
「おまえは所詮、蛇島 翠加に選ばれなかった負け犬でしかないんだよ水本」
「っ、やめろ…!!それ以上言ったら俺が今すぐてめぇをぶっ殺す…!!」
耳にも入ってこなかった。
わたしに聞かせないようにしたいのだろう久遠くんの声はぜんぜん聞こえなくて。
わたしにはただ、鬼木の不快でしかない声しか聞こえてこない。
「忘れちまったならもう1回丁寧に最初から教えてやろうかァ?
───翠加はお前じゃなく、アヤハを選んだ。最期の最後までアヤハの名前を呼んでたんだぜ?」
ここで、わたしの復讐が甦ってきた。
せっかく、せっかく忘れていたはずの真実が。
「つらいよなァ、誰にも期待されず頼られねェってのは」
「っ……、」
「結局アヤハにも俺にも勝てなかったてめェは、惚れた女すら守れない負け犬以下ってことだな」



