「……、」
どうすればいいの、わたしは、どうすればいいの。
呼吸がうまくできない。
怖いとか、逃げたいとか、そうじゃなくて。
気持ち悪いのだ。
この嫌悪感と憎悪が胸いっぱいに埋まる感覚は、考えられないくらいに気持ちが悪くて苦しくて。
そして───…悲しい。
「Rain shadow。つぎは誰が俺の餌食になるか楽しみだなァ?」
そいつがケタケタと笑ったタイミング、何台ものバイクのエンジン音がわたしたちを囲った。
気づけば海は閉園になっていて、家族連れなんてものは誰もいない。
ここからは夜の世界。
「これが俺がいま仕切ってる族だ。鬼神(きじん)っつってな、名前だけでも覚えておいてくれよ」
無名の暴走族がたくさんいる。
それは4つも有名どころが揃っているRain shadowを潰そうとしている奴らの集まりで、数えたらキリがないと。
いつかに久遠くんは教えてくれた。
「それに今日、俺はそいつに会いにきたんだよ」
「っ、そいつに近寄るんじゃねぇ……!!」
ずっと凛としたまま立ち向かっていた久遠 綾都が、初めて崩れた瞬間だった。
それは鬼木がわたしに近づいてきたからで。



