「久しぶりだな綾都。霊池に佐狐、赤矢。それから……瀧、」
「……なんで……おまえ、が…、」
ジャラジャラと音を出す重めのネックレスに、何個もつけられたピアス。
傷んで色落ちした金髪と、そこだけは手入れされている髭。
合わせただけで凍てつかせるほどの濁った瞳。
だれ……?
このひとは誰なの……?
「ようやく出所できたんだよ。ほんと退屈だったわ」
「……き、」
「あー?なんだよ?相っ変わらず姉貴と違ってお前は根暗だなァ、瀧」
“姉貴”
その言葉が出たとたん、瀧だけじゃなくわたし以外の全員が一斉に殺気を放った。
それが誰のことを言っているのか。
今はわたしも少しだけ知っている。
「っ、鬼木ィィィィィ……!!!」
見たこともない表情で、聞いたこともない声で、こぶしを固く握って走り向かったのは翠加さんの弟でもある瀧だった。
「遼成!!霊池…ッ!」
そしてまた、聞いたことないもの。
夕暮れの砂浜に響くには場違いなくらい怒りで震えている声音は、それをなんとか自分自身で制止ながらも命令を下した。
すぐに呼ばれたふたりは飛び出して、瀧の動きを止める。



