【短編】保健室の常連客


そんなにわかりやすくしょんぼりされると、心苦しいよ。

可哀想だったため、隣に座り、慰めるように背中を擦る。


すると、背中に回していた手を握られて──右の頬に柔らかくて優しい熱が触れた。



「なっ、何して……っ!」

「こないだ、突っついたお返し」



舌を出して笑っている目の前の彼を睨む。

久しぶりに、お得意の技を食らってしまった。


急にキスするなんて……!
あと、ほっぺた突っついてたの、バレてたの⁉


甘い笑顔にドキドキしていると、今度は反対側の頬にキスされた。



「……広川くんは、ふいうちの達人だね」

「えへへ、ありがとう」



ふにゃふにゃした嬉しそうな顔。
ズルいねって意味で言ったんだけどな。


家族想いで、人懐っこくて、頑張り屋さんなところも。
ちょっぴり抜けてて、私をドキドキさせるのが得意なところも。

全部、大好き。


閉め切られた小さな空間で、照れた顔を隠すようにギュッと抱きついた。



END