【短編】保健室の常連客


今度は私が目を丸く見開いた。



「ごめん、言葉が足りなかった。桧村さんが好きです。俺の彼女になってくれませんか?」

「っ……!」



言い直された、ストレートな告白。

不思議だ。さっきの言葉たちよりも胸に突き刺さったはずなのに、全然痛くない。

むしろ……心が踊ってる。



「……ごめん。こんな、ズルい言い方だったよね。嫌だったら断ってもい……」

「ううんっ。私も、広川くんが好きです……っ」



言い終わる前に、自分も思いきって気持ちを伝えた。


最初は、私とは違う世界の人だと割り切っていて、離れたところから眺めているだけで幸せだった。


そんなある日、保健室に君がやってきた。

初めはぎこちなかった会話も、交流が増えていくにつれて楽しくなって。
それと同時に、気持ちも大きくなっていった。


けれど……教室に戻れば、私は1人で、君はたくさんの仲間に囲まれる。

いくら保健室では仲良しでも、教室では、ただのクラスメイトに過ぎなかった。