紅蓮の炎は心を壊す

「紅葉は「ほしいものは何もない」って言ってだけど、何もお礼をしないのは失礼だから、俺の屋敷へ連れて来た。自分の家と思ってくつろいでくれ」

「そのお気持ちはとても嬉しいですが、あたし、仕事がーーー」

紅葉がそう言うと、部屋の襖がスッと音を立てて開く。そこには、綺麗な着物や帯を持った女性が三人立っていた。

「紅葉様の朝のお支度に参りました」

「ありがとう。俺は先に行っているから、支度が終わったら連れて来てくれ」

「かしこまりました」

状況が飲み込めない紅葉の頭を軽く撫で、ヒノカグは部屋の外へと出て行く。襖が完全に閉じられると、紅葉は三人の女性に囲まれ、古びてボロボロになった着物から豪華な着物へと着替えさせられていく。

「あたしにこんな綺麗なの着物、似合ってますか？」

着せられた着物は、ヒノカグが羽織っているマントのような派手な赤いものだった。大きな牡丹の花が描かれている。このような着物を着たことがなく戸惑う紅葉に、女性三人はニコニコと微笑みながら「お似合いですよ」と言う。