紅蓮の炎は心を壊す

ヒノカグの声が耳元で聞こえ、驚いて紅葉は目を覚ます。すると、目の前にいたのは炎の姿をしたヒノカグではなく、全く知らない男性だった。

赤茶色のアップバングヘアに、黒曜石のような真っ黒で美しい瞳、高い鼻にシャープな顎の華やかな顔立ちの男性が寝転がり、頭に手を置きながら紅葉を見つめている。

男性の服装は、上は赤い宝飾が施された黒い上着を羽織っているだけで、胸元やお腹は見えており、引き締まった体が嫌でも目に入る。そして赤い派手なマントを着用し、下は白いサルエルパンツを履いている。

「あっ、えっと……」

半裸同然の男性が隣にいることに紅葉の頬は赤くなり、恥ずかしさから布団に潜ろうとする。その時に、布団の柔らかさに改めて驚き、体を起こすとそこは薄汚れてボロボロの部屋ではなく、綺麗な畳が敷き詰められ、立派な調度品が揃えられた和室だった。

「えっ、ここは……?」

紅葉が戸惑っていると、男性が体を起こす。そして、「人の姿に戻れたんだ」と紅葉を抱き締め、言った。その時、紅葉はようやく目の前にいる彼がヒノカグだと気付き、「えっ!?」と驚いてしまう。